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[雑談] プライドを失ったテレビ企画
04/28/2002 23:09 (投稿者:たかの)

「ウィーケストリンク」とコールする伊東四朗を見て、思わず背筋が凍った。フジテレビでスタートする「ウィーケストリンク☆一人勝ちの法則」の番宣だった。
さらに驚いたのが、既に「クイズ$ミリオネア」を放送しているフジテレビだったこと。悪い冗談かと思ったが、どうも現実らしい。

これのオリジナルである英BBCのゲームショウ「WEAKEST LINK」は、そもそも英ITVの人気ゲームショウ「WHO WANTS TO BE A MILLIONAIRE?」に対抗して組まれたものだ。この戦いは米国にも飛び火して、先行して人気番組となった米ABC「WHO WANTS TO BE A MILLIONAIRE」を追うかたちで米NBC「WEAKEST LINK」が組まれた。
このへんの話は「アメリカTV/映画ノーツ」の「フー・ウォンツ・トゥ・ビー・ア・ミリオネア」および「ウィークスト・リンク」に詳しいので、そちらを参照して欲しい。

で、私は冒頭で「背筋が凍った」と書いたのが何故かというと「ミリオネア買ってきて、あんだけ苦労したくせに、また懲りずに買ってきたのかよ!」の一言に尽きる。
米ABCでの爆発的な人気とは裏腹に、日本の「クイズ$ミリオネア」は全くもって不振のスタートであった。最初の数回はおろか、最初の1,000万円獲得者が出た放送(ある種、この番組の頂点とでもいうべき瞬間)でもさほど伸びず、特番でタレントを大量投入してようやく人気番組の仲間入りをしたのである。
民放連の規定による「5人一組で1,000万円」というショボい賞金も、話題性を削ぐには十分な理由だが、それ以上に問題だったのが、日本と英米との「クイズ番組」に対する温度差にあるように思う。

英では「ゲームショウ」、米では「リアリティショウ」と呼ばれるように、英米のクイズ番組というのは、あくまでゲームだという色彩が濃い。つまり知識の優劣を問う以上に、ゲームに取り組むプレイヤーを観戦することで楽しむのだ。ところが日本では、晩年の「アメリカ横断ウルトラクイズ」や、TBSとフジのクイズ王番組で「雑学の保有量と回答テクニックを競う」だけの、つまらない番組に仕立て上げてしまった。いくら真剣勝負とはいえ、所詮は雑学。問題の対象を「カルトQ」のごとく広げすぎれば、多くの視聴者の共感は得づらいし、かといって緩めれば「クイズ研」と呼ばれる雑学の詰め込みが得意な一部の集団に根こそぎ荒らされてしまう。ひらたく言うと、日本のクイズ番組は 全くもって面白くない
日本で唯一この殻を破れたのは、TBS「クイズ悪魔のささやき」くらい。つまり大半の「クイズ番組」は、フォーマットだけ輸入してきても日本では通用しないのである。

それでも「ミリオネア」は、常時タレントを交えることで、既存の「クイズ番組」の呪縛を解き「ゲームショウ」的な側面を演出することに成功した。この努力は「無駄にしない日本人」っぽくてよいとは思う(私は見ていないけど…)。
しかし、そこまで懲りたくせになぜ「WEAKEST LINK」が必要なのか?全くもって理解できない。

言わせてもらえば、私は「WEAKEST LINK」は日本では無理だと信じて疑わなかった。その理由は「キメゼリフ」にある。
「ミリオネア」の「Is this your final answer?」は、まだ「ファイナルアンサーですか?」と、日本語に転じてもまだ通用する。しかし「WEAKEST LINK」の「You ARE the weakest link, good BYE!」は、どう考えても日本語では無理だ。これは「ザ・チャンス」の伊東四朗をもってしても埋めがたい溝である。伊東四朗に強いて言わせるなら何かと思いを馳せてみたが「アンタお荷物なんだって。お疲れ!」ってのが精一杯。
ここまで元のフレーズから変化させないと通用しないなら、そもそも買ってこないで日本向けの新企画で勝負したほうが、よっぽど前向きというものだ。
(補足しておくと、番宣で伊東四朗が言っていたのは「退場!」だったみたい)

ひとつだけ思い当たるのが「この番組は、英米でミリオネア並みのヒットを記録した人気番組なんですよ」というスポンサー向けの営業トークである。日本人の下手クソな独創性を発揮するよりは、海外の既存のヒット番組のほうが説得力もあるし、提案者の責任も薄れるかもしれない。けど、それって企画屋としてはどうよ?

そんなプライドを無くした企画屋の貴方に贈りたい言葉がある。それはもちろん「WEAKEST LINK」の司会者、アン・ロビンソンの言葉だ。
You ARE the weakest link, good BYE!(アンタお荷物なんだって。お疲れ!)」

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