僕が金融の世界に首を突っ込んだのは、ちょうどITバブルがはじけた頃の話。
もちろん元より株取引に興味はあり、さらに元を辿ると博奕好きというのもありました。
そこへ仕事がまるで無い日々がやってきて、岩田さんに岩井克人を紹介してもらって、
…思えば、そりゃもう随分と遠いところに来てしまったナァという感じ。
でも、それだけ読み応えのある本でした。
僕が今まで理解できていなかったことのひとつに「金本位制でなくなること」の重要性、というのがありました。
現在、日本やアメリカで流通している紙幣は、いわゆる不換紙幣であるわけなんですが、それがどんな厄災をもたらすトンデモ制度なのか、歴史的経緯を交えながら分かりやすく教えてくれます。
そして、"The Creature from Jekyll Island" がもたらす、最悪のシナリオも。
現実問題として、ちゃんと金融について学んできている人であれば、とっくに分かっていることなのでしょう。
フツーの日銀マンあたりには「何を今さら」と言われてそうです。
ただ一方で、この話があまり詳しく語られることが少ないのは、なんでか。
岩井克人「会社はだれのものか」でも、このあたりはサクッとお茶を濁されていた。
やはり、それだけ簡潔に説明するのが難しい話なのかもしれません。
ただ、この本、そのボリュームの割には十分簡潔で、無駄がなく、分かりやすい。
ロバート・キヨサキのアホ本(あれは本当に大事なことがすっぽり全部抜けていて、誰でも知っていることしか書いていない)より、よっぽど読む価値があるはずです。
そして、もうひとつ面白いのが、これの日本語訳を担当された吉田利子氏。
このひと、なんか普通は一般的なスピリチュアル本を訳されている方で、ぜんぜん金融方面の専門家じゃないみたいなんですね。
だもんで、ところどころに専門家であれば「おやっ」と思うような訳文が当てられていたりするんですが、まぁ間違いでは無いはずなんで許容範囲でしょう。
なにより「15年この仕事続けてきて、こんなエキサイティングな本は初めて」って(^^ゞ
なんか、ふつーのオバチャンがワクワクしながら訳した感がアリアリ。
でもその分「日本語の読み物」としても楽しく軽快に仕上がってました。
これを書いている2006年10月現在、まだ「ジキル島の怪物」は眠り続けています。
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