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[サービス] iNum: もっと流行ってもよいのでは
06/14/2010 01:12 (投稿者:たかの)

「Skypeと決別」してからも、IP網を使った音声通話の入り口は、出来れば設置しておきたいと思っていた。SIPで十分やろうとは思いつつ、重い腰があがらなかった理由は主に2つ。
どこぞの得体の知れないSIPサービスに登録してリスクをとりたくなく、かといって自前でSIP PBXを立てるほどには実需を見込めなかったから。
それが今回、まったく別の需要でX-LiteSJphoneといったSIPソフトフォンを試すことになった。その過程で初めて知ったのがiNum (international Number)だ。

iNumとは、VoxboneというVoIPキャリア2007年6月にITUへの登録を受けて開始されたものらしい。
もともとiNumが狙ったのは「グローバル・ナンバーポータビリティ」の機能のようだ。国際電話番号を示す国番号「883」およびprefix「5100」を冠した電話番号を提供することで、国に依存しない電話番号の提供を可能とする。
コンセプトは興味深いが、国家間を移動しながら同じ電話番号を使い続けたいという需要は、それほど多くは無さそうに思う。高いプライスの設定は難しく、金儲けは出来そうにない。
ビジネスとして成立しないのでは、存続は難しいのではないだろうか。

ところが面白いのはここからで、既に多くのIP電話サービス会社がこの仕組みに乗ってサービスインしている!!
そればかりか、iNum電話番号に対する通話を無料で提供しているというのだ。
各社がどのようなビジネスモデルで収益をあげているのか、とても全部見る気にはなれないが、多くはiNum番号から各国のローカル電話網へ、IP網を使った格安(有料)転送サービスの販売を柱としているようだ。
恥ずかしいのがSkypeで、なんとiNumに対する通話を有料で提供しているらしい。どれだけ殿様なのか、もはや理解不能としか言いようがない。


もちろん、まだ懸念すべき事項はあるだろう。

たとえば普通のローカル電話の顧客から見たときには、あまり魅力が無いだろう。
いちおう、iNumにはローカル電話網からの着呼に対応するためのゲートウェイが設置されているらしく、たとえば日本では東京03-4520-9777を呼び出し、英語ガイダンスに従って(別に無視しても問題ないが)iNum番号をトーン発信することで通話可能だ。このときの電話料金は、東京03への通話料そのもので、ゲートウェイから先について別途通話料が加算されるわけではない。
ただ、この発呼方法は煩雑で「電話機を使って電話をかける」という行為の手軽さからは程遠い。
また、(今となっては割安感に乏しい)ローカル網の通話料は払わなくてはならず、オトク感も無い。


一方で、iNumサービスのある各社の顧客にとっては、大いにメリットがあるはず。
まず何より、解放するIPアドレス空間を限定できるのが嬉しい。Skypeみたいに得体の知れないピア同士で接続を強要されることもない。もちろん純粋なSIPクライアント/PBXとしては問題かもしれないが、こちとら通話が出来れば構わないんだから十分だ。

また、不満があったらいくらでも各社を渡り歩けるというのも嬉しい。
単一の会社(どことは言わないけど)が、全世界において、常に最高のサービスを提供しようというのは、大風呂敷を拡げすぎというものだろう。
国ごとの商習慣、国ごとの価値観、国ごとの回線事情に通じた、各国ごとの「強い会社」が残ってくれて、足りないサービスを各社が連携して補完してくれればよい。
この仕組みであれば、日本の050電話網のように、系列間によってはピアすらしておらず、有料であるばかりか通話すら出来ないというような恥ずかしいことにもならないだろう。


品質には多少、不安は残る。
日本の「電話会社」に課せられた「高品質な通話」は望めないかもしれない。しかし、そもそもベストエフォートを基礎に置くインターネットIP網を利用しているのに、品質保証を求めようというのがおかしいと思う。
だいたい「どんなボロいPBX使ってんだ」と首を傾げざるをえない酷い通話品質の電話は、マーケティング系を中心に常態化しているはず。
だったら、品質保証を傘にして無駄に参入障壁をつくってもしょうがないではないか。壊滅的に悪い品質であれば、黙っていても顧客は逃げてゆくのだから、過度に規制の網をかけてもしょうがないし、へたに固持されるようなら「またなんか利権でもあるのか?」と勘ぐってしまう。


iNumに参加している企業のうち、数年後に何社が残っているか怪しい、とは、正直思う。
かなりコミュニティベースのNPOに近い運営をイメージしているところもあるようで、ちょっと甘すぎるんじゃないかなぁと思ってしまうところも見た。
それでも、ちょっとだけ応援してしまう。

僕が熱中したインターネットは、今みたいなプロプライエタリな世界では無かったはずだ。
iNumには、ぜひ頑張ってもらいたい。

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